裏の建築現場から流れるラジオは「おばちゃん日記」
自宅の裏でいま、隣家の新築工事が進んでいます。愛犬が工事の音などに反応して、時折、吠えます。散歩から帰って、それをなだめるのが最近の朝の勤めになっています。その建築現場にはたいていラジオが流れています。きょうはいつもと違うラジオ局で、聴き覚えのある番組でした。「おばちゃん日記」です。いつもの取材ぐせが出て、建築現場に足を運びました。
「すみません。ラジオのことで聴きたいことがあるんですが…」。てっきり、音を小さくしてくれ、という文句だと思ったのか、大工さんが音量を絞って、恐縮そうに近づいてきました。「いつも聴いているラジオ番組と違いますねえ」と私。キョトンとする大工さん。「裏に住んでいる者です。実は、あなたが今、お聴きのラジオ局に勤めていて、この番組にもかかわっているんです。きょうはどうして、この番組を聴いているんですか?」。
不意の、不躾な訪問者の質問に、人懐こそうな笑顔を浮かべて、大工さんは答えてくれました。「なあん。ほかのラジオは演歌ばっかりやったし、面白くないし。このラジオ局を聴いたのは初めてや。ほうか。あんたが勤めとるんか。ほんなら一所懸命に聴くわ」。こう言って、ボリュームをさらに上げる大工さん。
「また、感想でも聴かせてね」。踵を返す私に「このラジオ局、ラジオ小松やったっけ?」。足元の資材につまずきそうになったのをこらえて、「ちゃいます、FM-N1。76.3メガヘルツ。野々市町の放送局ですわ。覚えておいてね」。
家に戻ると、愛犬が尻尾を振って待っていました。裏の建築現場から音がして、またワンと吠えます。「吠えたらいかん。あの大工さん、いい人なんだから」。
見上げると、秋晴れの空。建築現場から「小さな喫茶店でアルバム聴けば」が流れてきます。きょうは淺川マキの特集なんだ。おっ、いけねえ、もう8時半か。会社にいかなくちゃ。遅刻だけど、きょうは朝からいい話をできたなあ。じゃれる犬に別れを告げて、車に乗り込みました。















