もう一つの感涙物語
工大祭の特番準備で、学生やスタッフが動き始めた10月24日(土)午前。私は、いしかわ総合スポーツセンターにいました。第15回日本電動車椅子サッカー選手権大会(FM-N1後援)の来賓としてです。来賓なんて面映いし、分不相応ですが、取材を通じて、この全国大会の運営に野々市町に住む城下さん一家が関わっていることを知り、ぜひともお会いして競技も観たかったのでした。
1チーム4人で競う電動車椅子のサッカーは、選手たちが大声を出すこともなく、整然とした動きの静かなゲームでした。電動車椅子のスピードは時速6キロ(国際競技では10キロ)。想像していたより動きが早く、とくに、後ろの車輪を軸にスピンをかけてボールを蹴る動きは美しいとも思いました。日本電動車椅子サッカー協会会長の高橋弘さんと話す機会がありました。「城下歩くん(野々市町在住で野々市明倫高校生)は全日本代表の最有力候補でエース、世界でも5本の指に入る選手です」。今回の大会の実行委員長を務める歩くんのお母さん・由香里さんにこの言葉を伝えました。「会長さん、そんなことをおっしゃっていましたか」と、照れながらも喜んでいました。
コートで繰り広げられるゲームを観ているうちに、不覚にも涙が出てきました。開会式の途中に、この大会を前にして亡くなった方たちの名前を読み上げて黙祷する時間があり、今、目の前で無心にボールを追いかける選手たちの姿と重なり合いました。進行する病気と闘いながら、いま競技をしている方もいるのです。
ラジオという言葉の世界に生きる一人として、「障害者」という用語に違和感を抱いてきました。障害者と言ったり、書いたりした時、この用語を作った「健常者の上から目線」のような心を感じるからです。そんな折、アメリカの人からフィジカル・チャレンジド・パーソン(肉体的に挑戦する人)という言葉を教えてもらいました。今、コートの上で懸命に動き回る姿は、対戦する相手に対してよりも、まさに自分自身への挑戦。ボールを追う彼らにピッタリの言葉です。そんなことを思っているうちに、込み上げて来るものがあったのでした。
開会式から帰って、学生たちによる2日間の工大祭特番に付き合いました。最終日の終盤には、達成感やドラマチックな展開によって感涙にむせぶ学生が続出したことを、他のスタッフが記しています。「大の大人が人前で泣くものではない」。ふだんはこう言っているのですけれど、反対の言葉もちゃんと用意しています。
「人間の体から出るもののほとんどは汚い排泄物だが、唯一、きれいなものがある。それは涙。とくに、感動で流す涙で遺伝子のスイッチがオンになり、細胞が活性化し、心がきれいになり、人間も成長する」(遺伝子学者・村上和雄)















