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「レコード化されていない曲はヒット曲ではない?」

2010年6月18日 20:43

毎週火曜日昼12時から生放送「これまで針何本?」、6月15日(第11回)放送では「昭和ひとケタ時代に活躍した男性歌手」をテーマにお送りしました。これまで針55本です。

 

では今日のテーマは「ラジオで放送された曲がすべてレコードになったわけではない」です。

 

1990年代のFMラジオといえば、「カウントダウン」と「パワープレイ」なる二大歴史を作り上げました。20年経って、いまだにそれを信じて放送している局もあるようですがどうするんでしょうか・・・。リスナーの方が賢くなり、「パワープレイ」で左右されない、「カウントダウン」の1位が理解できない・・・などを感じている人が多数を占めてしまいました。つまり、ラジオ局は次なる「流れ」を生みださなければいけないわけです。もう過去の遺産でゴハンは食べられないわけですね。

 

ところで戦前はどうだったのでしょうか。

昭和ひとケタ時代、ラジオから流れる音楽はSPレコードをかけることは滅多にしませんでした。よって生本番で、楽団(ラジオ局用スタジオミュージシャン)が演奏し歌手が歌ったのです。その歌手も「持ち歌」があるのではなく、今日歌う曲の楽譜が手渡されて、即興で歌うのが普通でした。ですから今の時代みたいに、CDが発売されるから、プロモーションとしてCDをプレーヤーでかけるとか、CDが発売したのでCDプレーヤーでかけるといった放送スタイルではありませんでした。

 

例えば昭和8年には「少女歌劇主題歌」ブームがきます。ラジオでも特集が組まれました。戦前のデータからみると

 

宝塚少女歌劇  ラジオ放送主題歌数 315作品  レコード化 305作品

松竹少女歌劇  ラジオ放送主題歌数 184作品  レコード化 152作品

 

です。ラジオで流れ、人気のあった曲がレコード化されていくわけです。つまりレコード化されなかった作品は、どんなメロディーだったのか、今では知る人もいない、というわけです。しかしレコード化するのは、メーカーの都合です。レコード化されなかった作品は、ダメ曲だったのでしょうか?誰ひとりとして好きな人がいなかったからレコード化をしなかったのでしょうか?。

もしかすると日本の流行歌の歴史は、完全な再現は不可能なのかもしれません。ちなみに少女歌劇に限らず、対象を流行歌としてみても

 

昭和9年  約470曲が放送され  レコード化は うち370曲  よってこの1年で100曲が死んでいったわけです。その中には有名な作詞家・作曲家の作品もあります。そして今となっては再現が不可能なわけです。76年前ですからね。

 

もっと悲惨なのは、昭和15年から昭和20年(終戦)までです。この6年間に関しては、レコード盤そのものが作れないわけですから。ごく数枚しか発売されていません。

 

毎年約100曲ぐらいの作品がレコード化されなかったとすると、戦前20年間で約2000曲。この作品が今日では分からないわけです。よってヒット曲の変遷史の書かれた本などは、あくまで代表作品が書かれているだけかもしれませんね。

 

レコード化されていない曲は、本当にヒット曲ではなかったのでしょうか。誰も口ずさむことはなっかたのでしょうか。ラジオで歌唱した歌手も、好きな曲がレコード化されなかった・・ということはなかったのでしょうかね。いろいろ気になります。

 

2010年4月27日第4回放送資料より