学校が荒れた20年前に「町民会議」設立
ののいちっ子を育てる町民会議」は、昭和62(1987)年に設立されました。「20年前は全国で学校が荒れ始めた頃でした。また、当時、青少年を取り巻く環境で特に問題になっていたのは、少年事件の凶悪化、行き過ぎた性行動、シンナーなどの薬物、不登校の四つでした。野々市町も例外ではなく、これらの青少年問題に地域ぐるみで真剣に取り組まなければならないと痛感し、行動を起こしました」。
こう振り返るのは、町民会議の立ち上げに奔走し、事務局長を務める山本邦継さん(野々市町本町6丁目、会社社長)です。しかし、設立当初は「子どもの育成活動は、PTAや学校に任せればいいじゃないか」の声も強かったと言います。地道な活動が認められて保護者などから確かな手ごたえを感じたのは、「町民会議ができて10年目の平成8年、いじめ問題が取りざたされるようになった頃でした」と山本さんは振り返ります。
その後、メンバーが街頭に立って児童生徒に声かけをする「愛と和のひと声運動」や「町ぐるみ美化清掃」、青少年に有害なピンクびら・ちらしの除去などを学校やPTAなどと連携しながら展開してきました。そして、全国に先駆けて平成15年から、「小中学生に携帯電話を持たさない運動」、いわゆる、プロジェクトK(携帯)を立ち上げ、保護者や町民に呼びかけてきました。
県PTA連合会も持たせない宣言
今年2月下旬、石川県PTA連合会が「原則、小中学生に携帯電話を持たせない」宣言文をまとめました。これに先立つ1月下旬に、文部科学省は全国の小中学校に児童生徒の携帯電話を持ち年2月下旬、石川県PTA連合会が「原則、小中学生に携帯電話を持たせない」宣言文をまとめました。これに先立つ1月下旬に、文部科学省は全国の小中学校に児童生徒の携帯電話を持ち旨とは内容が異なることを強調します。
町民会議では、インターネットによって児童生徒の情報が不特定多数の目にさらされ、犯罪に結びついてしまう有害性を指摘。児童生徒に携帯電話はいらないと早くから呼びかけ、活動してきました。こうした先進的な取り組みが全国から注目され、全国メディアにもたびたび紹介されるようになりました。
御園小学校と布水中学校でPTA会長を務めた北川千里さん(野々市町御経塚)は、親の立場からプロジェクトKに賛同し、活動を応援してきました。「自分も初めはそうでしたが、親は携帯電話の機能や怖さを知らなさ過ぎます。携帯の怖さはもちろん、ゲームや有害ビデオの危険性を家庭で話し合うことが出発点です。家庭の事情によっては子どもに携帯が必要な場合もあるでしょう。そうした時の決め事、ルールを家庭できちんと話し合ってください、と言い続けてきました」と北川さん。他の市や町のPTAから子どもと携帯電話について講師に招かれることも多く、「私の話を聴いて被害や危険性が思っていた以上に深刻なことに皆さんが気づきます。子どもが携帯電話を持つことについて親に危機意識すらないことこそが危険なのです」と力をこめる北川さんです。
町民会議の調べでは、野々市町の携帯電話の所持率は小学生5・3%、中学生12%。石川県平均の小学生8%、中学生22%を大きく下回っています。しかし、「携帯を持たさないだけでは対処できない状況にある」として、「群馬大学特任教授の下田博次さんが行っている市民運動のようなさらなる展開が必要です」と話すのは、布水中学校の生徒指導主事・南克彦さんです。教師の立場から南さんは、北川千里さんが指摘した「親が携帯の怖さを全く理解していない」ことに全くその通りとしながらこう付け加えます。
「電話ではなく、持ち運べるパソコンを子どもに与えている、と保護者の皆さんは思ってください。日々進化する携帯電話の機能に伴って、新しい危険も増えています。例えば、以前はネット上の掲示板でよく事件が起きましたが、今はプロフ(自己紹介サイト)やブログ(ウェブ上の日記)の炎上が問題になっています。今の小中学生の親はネット世代ではなく、子どものレベルについていけないのが現状です。親も教師も携帯電話の新しい機能を勉強して、子どもときちっと話をしてルールを作り、大人が監視できる状況を築くことが大事です」。